人材を活かす社長対談シリーズ
株式会社 大庄 平辰代表取締役社長
平辰代表取締役社長
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武原誠郎イムカ株式会社社長
大庄は1968年の創業以来、今や日本を代表する和食系外食企業として、この40年間にわたって「食を通じて、健康で豊かな日本に」を合言葉に、大衆割烹「庄や」、「やるき茶屋」、「日本海庄や」など約40に及ぶ業態を展開してきた。たった6坪からスタートした同社は現在、北海道、沖縄を除くほぼ全国に936店舗(08年11月)を数え、目標としている1000店舗目前に迫ってきた。お客様が求める「味」の変化も激しく、又、競争激化の外食産業にあって成功物語の「隠し味」は何かをイムカの武原誠郎社長が聞いた。
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見返りを求めない「愛」

武原氏

武原氏写真 御社は「日本の台所」をモットーにされて、食品衛生では独自の検査機関によるダブルチェックなどの川上分野から、「お母さんの愛」のようにお客さまへの心づかいとして、店づくりなどの川下分野まで、一貫して手がけられていますが、社長はどういう動機でこのご商売を始められたのでしょうか?

平氏

最初に就職したのは日立製作所のIBM課でしたが、電車が通っていない佐渡生まれの身には毎日の満員電車が耐えられなくて、辞めました。その後、始めたのは、滅菌箸の製造・販売です。割り箸を再生ビニール容器に入れて高周波で滅菌したものですが、これが大ヒットしました。その営業のために飲食店に出入りして得た感想が「食べ物はずいぶん儲かるものだ」というもの。これが、後に飲食業を始めるきっかけになりました。ところが「滅菌箸」は詐欺に遭い、辞めざるを得なくなったのです。そこで次に、飲食業を営んでいた義理の兄に相談し、二子玉川のドライブインの立ち上げから手伝い、初代の店長になりました。桜の名所で見晴らしが良く、店は大いに繁昌しました。
二子玉川のドライブインを2年で辞めた後、独立して池上で小さな焼鳥屋を始めたのですが、お客さんがまったく来ない。そこで様々な工夫をする過程で商売の基本を会得した気がします。その焼鳥屋で1000円から始めた日掛け預金を原資にして次に水道橋に店を開きました。

武原氏

社長は「お母さん、ありがとう」という名著をお書きになられています。最近は、家族間でも不幸な事件が多いのですが、社長のお母さんを想う気持ちが商売の基本となっていらっしゃるとお見受けいたしますが、いかがでしょう?

平氏写真

平氏

「母の愛」の大切さを実感したのは、この水道橋の店のときです。この店は繁盛したのですが、忙しすぎて店員が居つかず、すぐ辞めてしまう。人間不信に陥りましたね。どうしたらよいか悩みましたが、「求めてはダメだ」。「与えなければ」ということに到達しました。従業員が何を望んでいるのかと尋ねると、「一国一城の主になりたい」と言う。「では、そうしよう」と思ったのですが、口で言うだけでは信用しない。実際に従業員を独立させても、社長の親戚とか、古手の社員だと、まだ信用しないんです。4人目に、新聞広告で入社した一般の社員を独立させたところで、ようやく「もしかしたら、自分たちも独立できるかも知れない」と思ってもらえました。この頃、人の心を掴むにはどうしたらよいのかを考えて、宗教の本を沢山読みました。その結果、どの宗教も最後は「愛」だと認識しました。見返りを求めない「愛」。それはおっしゃられた「母親の愛」に通じます。母親は何の打算もなく、子どもに与え尽くします。そうした考えに至りました。

元気と感動

武原氏

さすがこの応接間に「教育勅語」が掲げてあるだけに、親への孝行の心を生かされていますね、大変、感動するお話です。何歳のときでしたのでしょうか?

平氏

株式会社大庄ロゴ28歳のときでした。良かったり、悪かったり、人生はアップダウンがありますね。
4人の従業員を独立させたのですが、そこで銀行からストップがかかりました。「保証能力がない」というわけです。

武原氏

銀行は「雨が降ると傘を取り上げる」と言いますからね。

平氏

そこで協同組合をつくりました。それまで8店舗をすべて別会社にしていたのですが、4人と合わせ、12社で。これが良かったのです。12社で連帯保証し合い助け合う仕組みができました。

武原氏

武原氏写真 私も時々、「庄や」にうかがって鍋をいただきますが、御社の社員の「はい喜んで」という言葉は気持ちがいいですね。社員を採用する際の人材の“目利き”は何でしょうか?

平氏

あまり難しいことは求めません。まず、元気であること。そして感動できることですね。感謝の心を持てることが大切だと思います。われわれ人間は、野菜にしても、魚にしても生命のあるものを殺して食べています。「一物共食」と言いますが、家族皆で例えば大根を食べます。すると大根のDNAが家族皆の体に入り、共鳴し合います。今は、個食が問題になっていますが、かつては家族全員で食卓を囲むのが日本の家族でした。戦後、脂(油)、バター、チーズなどが入ってきて、「日本の味」が蝕まれ始めました。農耕民族には、もともとなかった味ですからね。

掃除をすると店が繁盛する

武原氏

社員教育はどのように行っているのでしょうか?

平氏写真

平氏

例えば、ファーストフードのお店だと、社員教育もマニュアル教育が主流でしょう。しかし、当社では、あまりマニュアルに頼っていないのです。社員教育については、研修センターと職業訓練校を持っており、そこで行っています。職業訓練校については来年から短期大学に昇格する予定です。衛生、調理、栄養についてのほか、心の教育、自分とは何か、人との付き合いの仕方などが内容です。また、掃除をすることも立派な教育なんです。掃除は心を磨くことになりますし、地域との共生にもなります。きちんと掃除ができる店長を置くと、店が繁盛することになります。不思議ですね。

武原氏

お話を伺うと、社長の掲げる「愛」の精神が御社の「愛の経営」を支えていることが良く分かりました。
この尊い愛の心でもって、国内外に数多く社会貢献されたことに、日本国、地方自治体、日本赤十字社等から数多くの感謝状、表彰状を受賞されて、私の尊敬する偉い経営者であります。加えて「親孝行の国、日本」「人を愛する国、日本」「笑顔の満ちあふれる国、日本」「心美人の国、日本」そんな国づくり運動に感銘致しました。
本日は社長の人生観が経営観であり、人材観であるという、貴重なお話に大変感動しました。社長は尊い経営者であり、真の愛国者です。本当に有難うございました。

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