さる5月22日に石井威望(いしい たけもち)東京大学名誉教授をお迎え
して、第2回イムカテクノクラブ講演会を港区航空会館で開催した。
70名程の会場はほぼ満席で、熱気あふれる雰囲気の中で講演が進められた。
講演のテーマは、「ネットワーク社会に挑戦する日本の技術」だ。
情報化社会は我々の想像を遙かに超えるスピードで動いている。かっての
大型計算機の時代は1985年をピークに終わりを告げ、ミニコン、パソコン
の時代を経て、今日はモバイルの時代になった。
NTTドコモの株式総評価額がトヨタ自動車を抜いて日本一となり、経常利益
でもNTTを抜こうとしている。このことが、モバイル時代の到来をまさに象徴
している。
デスクトップパソコンではどうしても情報受信型になる。これに対して
モバイルを持つと情報発信型になる。モバイルを持つと、現場の生々しい
状況や興奮を、誰でも世界に向けて発信したくなるからだ。FAXもない
モンゴルやネパールの奥地からも、モバイルを持った若者たちが刻々興奮
を伝えて来ている。
モバイルの時代に、新幹線の中で寝ているのはサボタージュだ。モバイル
時代の波に乗ったビジネスマンは、時間を最大限活用することによって、
他の人の1年を2年にも4年にもできる。この競争に乗り遅れた企業は、
間違いなく敗北する。
石井先生の教え子には、このモバイル時代の先端を行く若者たちが大勢いる。
独特のファツションスタイルで、睡眠時間4時間弱、どんな状況下でも情報
発信を続ける神成淳司(しんじょう あつし)岐阜県立国際情報科学芸術
アカデミー助手もその一人だ。彼もセミナーに駆けつけ、感情を持つ最先端
のペットロボット「SONY のaiBO」を生々しく紹介してくれた。
http://www.sony.com/robot
「所詮玩具ロボット」などと馬鹿にしてはいけない。この「aiBO」や
「プレイステーション2」などの玩具こそ、design rule 0.18ミクロン幅の
最先端LSI を大量に搭載する、日本半導体業界復権のための原動力なのだ。
しかしこのモバイルの時代さえ早々に過ぎようとしている。Wearable の時代
がすぐそこまで来ているからだ。この来るべき時代では、高速・高性能の音声
入力により、両足ばかりでなく両手もコンピュータ操作から解放される。人々
はコンピュータ、通信機器など必要な情報機器一切を身につけてアクティブに
活動する。
石井先生は大東文化服装学院と協賛で、Wearable Computer のためのファッ
ションショーまで開催している。TVでドラゴンボールを見ていた人は覚え
ておいでだろう。あの戦闘民族の王子「ベジータ」そっくりのモデルもいる。
また、ゆかた姿のモデルもいる。彼の着物の裏側には、チップレベルに分解
されたコンピュータがびっしり縫いつけてある。アイデアは無限だ。石井
先生は、時代の変革は本来ファッションの変革を伴うと強調されている。
中高年がPrint generation、若者がTV generation とすれば、次の時代を
担う少年・少女たちは Wearable generation だ。
石井先生は、本日の講演の有効期間は一週間だという。来月にはどんな変化
が起こるか予測もできない。今後の変化を考える時忘れてはならない分野が
ある。それはバイオだ。バイオとネットワーク社会と何の関係があるのか、
などと呑気に構えてはいられない。
2003年には人ゲノム、すなわち人間の遺伝子構造が全て解明される予定であり、
21世紀はBio-Information Age と言われている。バイオを単に素子として
利用するばかりではなく、遺伝子レベルでの様々な情報を時々刻々情報交換
する時代がやってくる。情報産業とバイオ産業は一体となって発展していく
だろう。
石井先生の話から想像すると、Wearable generation は単に送受診用の
Wearable Computer を身につけるだけでは終わりそうにない。例えば、病気
の診断や治癒もWearable Computer を使って日常的に行うようになるだろう。
Wearable Computer はまさに我々の想像を遙かに越えた可能性を秘めている。
情報化社会はこれほど激しく動いている。
さあ、君はWearable generation の波に乗れるか?
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