武原氏
御社は社名の通り、“確実な成長”していますね。
特に基盤システム、組込み型開発、ビジネス系開発の3つの柱で躍進していますが、
その原動力には「クレスコ憲章」が大きく関係しているとお聞きしていますが・・・。
熊澤氏
そうですね。「クレスコ憲章」は当社の起業精神であり、活動の原点になっています。
武原氏
第1条:クレスコは人間中心、実力本位の会社である。
第2条:クレスコは自由、若さ、夢を持つ会社である。
第3条:クレスコは最高の技術を発揮する会社である。
第4条:クレスコは皆が経営する会社である。
第5条:クレスコは世界で生きる会社である――と、素晴らしい信条だと思います。
特にこのなかで社長が重要視されている項目はどれでしょうか?
熊澤氏
特にと言われると、「皆が経営する会社」ですかね。
いろいろな取られ方をされますが、全員が経営者ということではなく、社員ひとり一人自分の立場からが経営を考え、どう行動したらよいかといったことを考え、実行するということです。経営は役員を含めた全員の活動が連鎖した結果と考えています。ですから組織の枠や階層に必要以上にとらわれることのない自由闊達な風土やコミュニケーションが肝(キモ)なのです。「クレスコ憲章」は社員一人ひとりを尊重することをベースとしています。また、「こうありたい」という夢がたくさん詰まっているのです。
これは会社のビジョンというより、ある種の決意であり、理念なのです。ですから何か迷いが生じた時にはクレスコ憲章」に立ち戻るわけです。これで軸がぶれなくなる。経営には大切なことと考えています。
武原氏
100 名でスタートされたとのことですが、創業当時から社員一人ひとりがスペシャリストであり、かつまた、ジェネラリストのプロの集団であるとしていますが・・・
熊澤氏
その頃は日本全国のコンピューター化の大きな波に乗っていける時代でした。
まだ「オープンシステム」という言葉もなく、汎用大型コンピューターを企業が導入し、事務の効率化、オンラインシステムが発展していた時代でした。
当時、当社は他社のような営業専任組織を持っていませんでした。一人ひとりがエンジニアリングのプロフェッショナルとして、お客様から信用、信頼され、開発案件のオーダーをいただく。開発に携わるものが全員プロジェクトマネジャーのような動きです。リーダーが自分で仕事を取ってくる極めて能動的な集団です。
今でも社員には口うるさく言っていますが「自ら考え、行動し、結果を出す」、「技術を競い合い、切磋琢磨することで組織力を向上する」このような文化がここに生まれたのです。この文化は一種のクレスコらしさであり、強みでもあると思っています。
武原氏
キャリア採用が活発に行われていますが、採用の基準、人物像はどのようなものでしょうか?
熊澤氏
現場それぞれ要望がありますが、私は、自分の想いをストレートに表現し、実行できる人材を望みます。「これはこうでなければならない」といった固定観念に捉われることなく、「こういうことができたら面白いのではないか」とか、「やったことがないから挑戦してみようじゃないか」といった明るく前向きな精神とワクワク感を大事にする姿勢が欲しいですね。
真にチャレンジを好む人間は失敗を恐れません。当然、会社ですからリスク管理は万全を期しますが、当社には「社員のやる気」を支援する風土や制度がたくさんあります。また、コミュニケーションの場には物怖じせず、積極的飛び込んで欲しいですね。

武原氏
今、おっしゃった常に前向きで、提案力があって、コミュニケーション力があって明るい人ということになりますね。
ところで御社には素晴らしい研修制度があると聞いていますが・・・・
熊澤氏
オンデマンド研修が当社の自慢です。現場の「こんな研修が欲しい」という声も積極的に取り入れるように心がけています。実際、技術研修でも受講したいときに受けることができるシステムでないと、仕事の都合で受講できないといったことが生じてしまい、大事な機会を損失してしまいます。研修センターを設け、全面的に研修室と講師を社内に揃えて受講体制を万全にしています。
また、階層研修をはじめとするヒューマンスキル研修も今後、充実していく予定です。これは役員や上級幹部も例外ではありません。厳しいビジネス環境を勝ち抜くにはやはり、「バランス感覚と総合的な人間力」です。ご存知のとおり、我々の業界は「人」がすべてですから、人材の質と能力が企業の競争優位性そのものになるわけです。
武原氏
そうしたことが企業業績と定着率につながっているのですね。人材に対する経営としての考え方をもう少しお聞きかせください。
熊澤氏
先ほど申し上げたようにシステムをつくるソフトウエア企業には資産は「人材」です。
工場、特許、製品といったメーカーのように目に見えるものはほとんど何もありません。社員一人ひとりと各自に蓄積されたノウハウが資産なのです。ですから、人材が去ることは資産を失うことと同じことで大変な損失です。隣の芝生がよく見えることはありますが、自分にとって満足度が高い会社であれば辞めることはありません。少しずつの不満は成長に役立ちますが、大きな不満は摘み取らないといけない。
社員が「どうありたい」という意見を汲み取ることができる仕掛けを作り、共に議論し、その仕掛けを提供しながら、それを日々のマネジメントに活かすようにしています。
その取組みのひとつに業務報告制度があります。定期的に1カ月に1回、業務の内容、会社への提案などについて全社員がレポートを出し、ラインの部長は全員がそれにコメントを書くことになり、事業部長も全部目を通します。上長が何もコメントしないと、その上の上長、例えば部長がペナルティを受ける仕掛けです。業務報告そのものは珍しいものではありませんが、一方通行になりがちな制度を双方向性のある仕組みにすることで、いろいろな課題が明確になり、早期対策も打ち出しやすいといったメリットもあります。
また、やや不定期ですが全社員に対するオピニオンサーベイも行っています。今回、その結果を踏まえ、社内タスクフォースを立ち上げるとともに、社外コンサルタントの協力も得ながら人事システム、評価システムの刷新を行っています。2008年度以降、順次導入していく予定です。社員に気持ちよく働いて欲しいですから投資は惜しみません。
武原氏
IT企業では外国人エンジニアの採用も盛んですが、御社ではいかがですか?
熊澤氏
活発に行っています。クレスコグループ会社には上海にも活動拠点を持つウエインという会社もあります。ウエインは中国出身者で構成されているユニークな会社です。今後はローカル開発と併せてオフショア開発も積極化させる方針です。インド、中国、韓国などアジアはITの開発拠点として大変魅力的です。 現在はベトナムに大いなる可能性を感じています。昨年、実際にベトナムを視察し、ベトナム人は感性が日本人に似ていると肌で感じてきました。まじめで、昭和30年代の日本に近いところがあります。
武原氏
21世紀のクレスコ、世界のクレスコとしてどのような夢を持っていますか?
熊澤氏
これまでは「顧客が欲しいシステムをいかに早く開発し、実現するか」を国内中心に行ってきましたが、21世紀のクレスコは、我々が提案するビジネスモデルにシフトしていくことが必要だと思います。
具体的には、ソリューション事業、コンサルティング事業を軌道に乗せ、上流から下流までの工程すべてを対応できる体制を実現することです。また、グローバルマーケットを意識し、海外での活動も積極的に行っていきます。
一方、オフショアといったグローバル調達が進みますから、海外パートナーとの協業やブリッジSEの育成も視野に入れています。プログラムを書く部分はアジア諸国のエンジニアが担当し、我々はそれをうまくマネジメントする、といった役割分担の変化も今後は重要な戦略ですね。我々の業界のミッションは、労働力の提供ではなく、成果物であり、発想、バリュー、利益の元を提供することです。
そうなればIT業界の利益率が4%、5%と言っていますが、20、30%の営業利益を取れるようになります。
3K、5Kと言われますが、下を向いたら成長は終わりです。
我々には大きな夢があり、野望があります。自分を信じ、仲間を信じ、未来を信じて、今やるべきことはタイミングを逃さずやり抜く。私の好きな言葉のひとつ「卒啄の機」に通じる行動です。何事も明るく元気に行きたいですね。
武原氏
明るく、元気なお話が出たところで・・・。本日はどうもありがとうございました。